英語識者の間で、とある本が今話題だよ。
それが、TOEIC亡国論 (集英社新書)だよ。
なかなかぶっ飛んだ、というか、これはタイトルが炎上狙いとしか思えないね。
さて、そんな本に対して、とあるえTOEICkerはこのようにつぶやいているよ。
TOEIC亡国論をサクッと読みました。著者にとっての本当の敵は、本当にTOEICなのだろうか。スケープゴートというか客寄せパンダというか、TOEICが日本人と英語の関係性の一面を象徴的に示す存在であるがために、便宜上の悪役として使われた感があります。
— HBK (@HeadbuttK) 2018年3月31日
僕はこのひとと違って英語はまだ熟達していないけれど、読んだ感じだと彼とほぼ同感だったよ。
TOEICに限らず、英語の勉強全般的なことを言っていて、その中でTOEICを一つやり玉にあげることで売り上げを伸ばそうとする策略なのかと思うよ。
タイトルは煽っているようにも思えるけれど、著者は英語語彙大講座や英語冠詞大講座など、英語にかかわる本を出版しているだけあって、どこかの国の脳科学者のブログよりはるかに建設的な内容だったよ。
今回は、そんな「TOEIC亡国論」の内容を、見てみよう。
TOEICで英語のすべては測れない
TOEICは万能ではない
著者は、TOEIC自体のすべてをけなしているわけではないよ。
まず、英語に関する項目を細分化し、分析している。
まず、技能を「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能、レベルを「略式」「公式」「専門」に分けて考えている。
分野・レベルの観点から見ることで、本当にTOEICで計測される英語が、僕たちが暮らしていくうえで必要な英語と合致するのか考えているんだね。
では、実際どういうケースで、どのレベルの英語が、そしてどんな分野が必要とされると分析されているのかみてみよう。
例えば、海外で働く社会人のうち、専門知識を必要としない人に求められる英語は、「聞く」「話す」の技能が「略式」「正式」れべる、「読む」「書く」の技能が「正式」レベルだと書いている。
これは海外での仕事を経験していなくてもなんとなくわかるね。基本的に相手の意見を正確に聞けて、自分の意見が話せることが必要。
あるいは、大学生に求められるのは、「読む」ことにおいては専門レベルまで。その他の技能は正式レベル。
これも、うなずける。大学生だと英語の専門書を読むことはあるけれど、英語で論文を書くのはまだ先だね。
では、TOEICではどのような分野がどのレベルまで計測されるのか
日本でTOEICというと、L/R。リスニングとリーディングの結果が特に重要視される。
僕自身、TOEICは何回か受けたことがあるけれど、W/S試験は一度も受けたことがないよ。
というのも、受験料が、
L/R 5725円
それに対しS/Wは10260円
受験料が高いうえに、L/Rほど重視されないのなら、普通のビジネスマンは受験しないよね。
さて、そんなTOEIC L/Rテストで測る英語レベルはどう書いているか
著書にはこう書いている
TOEICを受ければ、正式なスピーチレベルのヒアリング、リーディングの力が「だいたい」測れる。
猪浦道夫 TOEIC亡国論
「だいたい」と付け加えられているところに、著者の皮肉が感じられるね。
で、TOEICで計測できるのは、「ヒアリング」「リーディング」で「正式」レベル。
となると、外国に拠点をおく社会人どころか、大学で求められる英語さえ十分に計測できていない。
確かに、TOEICの会話や文章に専門レベルのものが出ていることはないよね。
多くの英語試験は、特定分野の専門家を目指す人のものではないから当然といえば当然だけど、確かにTOEICで測れる英語力はかなり限定的というのがわかるね。
どうせ 試験を受けるのなら、英検やTOEFLの方が、測れる技能数が多い分まだ良いんじゃないかな。
多様な人が受験する試験だから、当然専門レベルが出されないのも当然だと思うよ。
また、最近は若干「略式」レベルも出されるようになってはいる。
とはいえ、TOEICで高得点を取っているからと言って、それはあくまでも「正式」レベルの英語の点数でしかないということは、世のTOEIC受験者は意識いなければいけないよ。
日本の教育にも問題あり
日本語の文法、正しく説明できますか?
さて、著者は国語教育にも意を唱えている。
むしろ、こちらの方がメインのようにも思える。
日本人ほど自国語のことを知らない国民も珍しい。
(中略)
日本の国語教育ではほとんどこのようなことを教えていないので、英語を学ぶときにも「決まり」にのっとって英文を組み立てるという発想がなく、ただ「丸暗記」しか方法がないように思う学生が多くなるのだ。
僕自身はある程度日本語の文法を学んだからこの意見には賛同できないところもあるけれど、確かに英文法を丸暗記だと思っている人は多いかもしれないね。
もしくは、中学英語で “For here, or to go?”のような、実用的だが文法的にかなり特殊なフレーズに最初に触れるのもどうかと思うよ。
たしかに、初期のころは、応用が利かない表現よりも基礎的な文法を習った方がよいと僕も思うよ。
国語教育でちゃんと日本語の文法を教え、初等英語でも文法を大事にするようになれば、日本人の英語力は向上するかもしれないね。
ALTは税金の無駄遣いだ
もう一つ、氏が批判しているのが、ALT、つまりネイティブ講師を補助するJETプログラムだよ。
また、母国語が英語の大卒者ならだれでもなれるという採用基準が杜撰だとの声も上がっている。アメリカ、イギリス、オーストラリアなどで英語を教えるためには、TEFL、TESL、TESOLといった語学学習に必要な資格が不可欠だが、にほんのALTにはこうした要件は求められていない。 TOEIC亡国論
中国や韓国などの英語を母国語としない国のALT制度を記さずに英語圏の英語教育と日本の英語教育とを比べるのはいかがなものかとも思うけれど、少なくとも日本のALTの質が保証されていないのはわかったね。
逆の立場として、もし日本語指導の訓練を受けていない僕が、大学卒業後アメリカに日本語教師として招かれたとしても、うまく日本語や日本文化を教えられる自信はゼロだよ。「日本で一番人気な歌手は誰ですか?」と聞かれて、サザンや安室奈美恵じゃなくて小倉唯と答えるような教師になるのが目に見えているよ。
氏の調べによると、JETプログラム参加者には年間で336~396万円の給料が支払われ、かつ住居費や保険料など含めると年間600万円以上の予算が一人に割かれている。
確かに、大卒者といいうだけで、住居費・保険料含めて実質年600万円以上給料をもらえるのなら、さほど優秀でないALTが来てもおかしくないね。
この点は、国に改善してもらいたいところだよ。
感想
僕のまとめだと、TOEIC関連の内容は全体の半分にも満たないね。タイトルと違うじゃないかという声が聞こえるよ。
でも、本書はこれに加えて、英語上達の方法がしるされている。この点については僕の英語力をもってしてとやかく言うのはおこがましいので省略したよ。
本書のうち、TOEICを直接的に批判しているのは多くて2割といったところかな。
どうも、TOEICという言葉で注目を引かせて売り上げを伸ばす、いわば炎上商法に近いものがあるよ。
そのためか、どうも見出しが内容と一致していないところが幾点か見られる。
例えば、第12章 プロを目指す方へのアドバイス の中の「南方熊楠の語学習得法」という見出しでは、このように書いている
(前略)そこにある資料をあさって熊楠がどのように語学を勉強したのかしらべてみた。彼の学習法は「一気に文法書を一通り読んで、あとはパブでイギリス人と喋りまくる」というものだった。
(中略)
パブで話まくるだけでこうした英作文力がつくはずはなく、彼は膨大な量の英語の論文を読んでいたに違いない
その後は3段落ほど、筆者の語学習得法が書かれている。この中で南方の具体的な勉強法は「文法書を読んで喋り捲る」のたった一か所で、その直後に「そんなはずはない」と否定、残りは筆者の学習法という、見出しとはまるで離れた内容だったよ。
もちろん、見出し云々は英語力とは直接関係ないんだけど、見出しや題名で読者を釣っている感じがして、あまりいい印象は持てないよ。
ブログを書いている身からすると、TOEIC批判以上にこういう釣りで売り上げを伸ばそうとする方がより悪意を感じるよ。
何が言いたいかっていうと、見出しや題名に騙されるなということだよ。
よって、おそらく著者も本気でTOEICが国を亡ぼすなどとは考えていないのだと推測しているよ。
今回はここまでだよ。
早くTOEIC900を取得して、この本を英語学習的観点から批判したいものだよ(^●ω●^)