はいどうも、カワウソだよ。
英検・日本英語検定協会が、受験料(検定料)を値上げすることを発表した。
(当初は、2018年度から2019年度にかけての検定料値上げのことを書いていたのだけど、その後毎年度値上げするようになった。)
2019年度より、実用英語技能検定(英検)従来型 検定料改定のお知らせ(pdf)
2021年度「英検」、「英検S-CBT」、「英検S-Interview」の検定料のお知らせ―および英検CBT/英検S-CBTのサービス統合について―
実は英検は、2019年度から、受験料値上げを毎年行ってきた。その結果、2018年度と2021年度とで、受験料は下記のように変化した。
1級 8,400→12,600 (4,200up)
準1級 6,900→10,700 (3,800up)
2級 5,800→9,700 (3,900up)
準2級 5,200→9,200 (4,000up)
3級 3,800→7,900 (4,100up)
4級 2,600→4,900 (2,300up)
5級 2,500→4,500 (2,000up)
(数字はすべて円・公開会場試験のみ記載)
不景気なこの時代、わずかな値上げも大きな打撃となり得る。にも拘わらず、検定によっては、受験料が2倍にまで跳ね上がった。
大学入試の英語試験として民間試験を活用するという文部科学省の後押しのおかげがあったせいか、さらに、コロナへの対応も関係しているのか、正直英検は調子に乗っていると思う。
今回は、値上げに関して英検側の言い分を見ていくとともに、この値上げが受験生にとっても、それどころか英検側にとっても不利益しか生まないということを考えていくよ。
(追記)
2020年度の英検受験料改定に関しても記載しています。
この発表においても問題が残るものだと考えています。
(再追記)
2021年度の英検受験料改定についても記載しています。
最初この記事を書いたとき、まさかここまで値上がりするとは思ってもいませんでした。
2018年度からわずか3年で、最大107%の値上げが実行されていることをこの記事で確認できます。
英検側の言い分(2019年度)
受験者数の増加と運営費の増加
まず、英検側はどのように説明しているか見てみよう(2019年度の値上げに関して)。
昨今、従来型の英検は、全国の多くの大学や高等学校の入試に幅広く採用され、英語能力を測定する英語学習者のための検
定試験というこれまでの位置づけから、新たに「入学試験」の要素が加わりました。それにより、入試利用のための受験者数が増加
し、また従来の英語学習者の皆様も、ここ最近の英語熱の高まりもあり、増加傾向にございます。
最近の従来型の英検の実施運営におきまして、こうした益々増加する受験者様を公開会場に収容するために多様な会場確保
が必要となり、会場借用単価が増加しています。また受験者数増加に伴い比例的に会場数も増加するなか、実施監督者をはじ
めとする人件費等の実施関連費用も増加しています。さらに、入試や情報管理等に対応し得る実施運営、及び物流の品質強
化といったセキュリティ関連費用等も増加しているのが現状です。
こうした実施運営に関わる費用が割高になっている中、これまでは検定料を据え置いてまいりましたが、いよいよ価格に反映する必
要性に迫られ、このたび、近年の受験者動向を勘案した上で、来年度から上述の検定料に改定させていただくことといたしました。2019年度より、実用英語技能検定(英検)従来型検定料改定のお知らせ
要点をまとめると
・大学や高校の入試に使われることに伴い、利用者数が増加した
・利用者数が増え、場所代・人件費などがよりかかるようになった
・セキュリティなどの費用も増えている
よって、値上げを実施する
ということのようだね。
しかも、最後の部分を見る限り、今までは何とか受験料を低いまま保っていたけれど、ついに値上げせざるを得なくなったと書いてある。
果たしてそれは本当なのだろうか?検証していこう
英検の言い分を検証する
英検の維持費用の高騰は確実
まず、「利用者数が本当に増えているかどうか」について。
英検の資料を見る限り、これは真実だ。実際に利用者は増えている。
英検公式HPの資料によると、英検の累計志願者数は、
2013年度は約266万人
2014年度は約264万人
2015年度は約323万人
2016年度は約339万人
2017年度は約336万人
2018年度は約386万人
(英検・実用英語技能検定、英検IBA、英検Jr. の志願者数の合算)
ずっと増加しているわけではないけれど、2014年度から2015年度にかけて受験者数増加が著しいことが一目瞭然だね。この1年度でなんと22.3%も上昇している
では、なぜ2015年度に受験者数が大幅に増加したんだろうか?
新テスト実施本部の設置を政府が公式に発表したのは2016年の6月だけど、公式に発表する前から話題にはなっていた。もともとは楽天の三木谷さんがTOEFLを活用しようと言っていたのだけれど、それがTOEFL『等』になり、英検やTOEICも参入したという流れだったね。
それで先取りをしようと多くの高校教員が2015年度、生徒に英検を受験をうながしたのではないかな。
そう考えると、英検の説明にある、「入学試験の要素」が英検に加わったというのは一理あるんじゃないかな。
しかし、それ以外の年は受験者数に大幅な変化は見られない。むしろ、減少している年もあるね。
ということは、英検の説明にある「従来の英語学習者の英語熱の高まり」は、受験者数増加にそれほど影響を与えていないということが予測される。
英検受験者の4人に3人以上が中高生だということを考えても、やはり国立大学受験における民間英語試験導入が、受験者数増加の一因だね。
英検の費用増加も当然
これだけ多くなれば、費用がかさむのも理由として不自然ではないだろう。
これは物価とかとは関係なく、自然な成り行きだ。
英検の説明にある通り、受験者が多くなれば、検定会場もより多く用意しなくてはいけない。試験監督数も増える。
また、今まで以上に受験者数が増え、情報の管理が難しくなれば、より高度なセキュリティ対策が必要となる。
また、問題の質を上げたり、採点基準をより合理的なものにするなどを考えたとき、一人当たり人件費を上げることも考えられる。
そういうことを考えると、確かに受験料の値上げは仕方のないことかもしれないね。
英検受験料値上げに伴う懸念
英語学習者が英検を受けなくなる
ただし、問題がないわけでは決してない。
特に打撃を受けるのが、中高生ではない一般受験者だ。
中高生の受験者数は、安定して取り入れることができる。何せ、受験に必要だからね。大学を受ける人はほぼ全員受けることになるかもしれない。
では、一方でそれ以外、例えば社会人の英語学習者はどうなるだろう。
正直に言えば、現在、大学生以上の人が英検を受けるメリットは少ないとおもう。
就活や留学で必要なわけでもないし、特に1級や準1級を受ける人は、自分の英語力を確認したい人くらいしか、英検を受ける動機にはならないだろう(あとは、ブランド力があるから自慢のために、というのもあるかもしれない)
日本で受けられる英語試験の中では安価だったということも、英検のメリットだったかもしれない。
確かに、TOEFL ibt (235米ドル)、IELTS(25380円)と比べると、英検の中でも最も高い1級(8,500円)の方が圧倒的に安い。
しかし、TOEIC(5725円)という比較的安価なテストが主流になった今、「安い」というメリットも消え失せつつある。
となると、中高生の受験者は増えるが、大学生以降の年代の受験者数が減少するのではないかな。
中高生の英検受験者数の急落も起こり得る
中高生受験者の増加があるからいいじゃんと思うかもしれない。
しかし、これにも不安がある。
というのも、本当に実際に言われているほど英検が使用されるかどうか、現時点で怪しいんだ。
例えば東京大学。英検を必修としないことを発表している。
東大、民間英語試験の成績を出願要件必須とせず 調査書に英語力記入で代用も可
これに伴い、東北大など、他の名門国立大も、英検の導入を控える方向だ。
有力な国立大学が英検を使わないと発表した。
これに伴い、多くの国公立大学で、英検を含む民間試験を必要としない可能性が出てくる。
そうなるとどうなるか。
今まで英検が頼りにしていた「中高生」の受験者が大いに減ってしまうかもしれないんだ。
それも、受験料を値上げしたうえでの志願者減少。英検側の収益は、値上げ以前よりも悪化するかもしれない。
英検受験料の値上げは、各国立大が正式に民間試験導入を発表してからの方がよかったんじゃないかな。
英語民間試験導入の延期を受けて
2019年11月1日、ついに山が動いた。
文部科学省は、英語試験の民間試験導入を2024年に延期した。
萩生田文科相 英語試験 抜本的に見直し 5年後実施に向け検討
これはつまり、現時点で中高生が英検を受験する必要がなくなるということだ。
上で「英検は中高生の受験者数急落もあり得る」と書いたけれど、まさにそれが現実になろうとしている。
英検の値上げにより、中高生以外の受験者数はおそらく減少する。
そして、しばらくは導入しないのだから、少なくとも今の高校生は英検を受験する必要がなくなる。
となると、すべての世代において受験者数が減少し、値上げによる利益以上の損害が生じる可能性が非常に高い。
正直言って、英検の値上げは明らかに間違いだったと結論づけざるを得ないよ。
おそらく、2020年度の英検受験者数は減少するのではないかとみているよ。
英検の受験者数を維持するために
高得点者に受験料を還元しよう
受験者数増加を期待して値上げをしたにもかかわらず民間試験導入が延期になったことで、英検の利益減少は確実なものとなるだろう。
むしろ、赤字になるかもしれない。
では、以下英検はどうすればよいか考えていこう。
僕は、英検はいい問題を作っていると思う(英作文の採点は甘くてガバガバらしいけれど)。だからこそ、受験者凋落による試験廃止という未来は見たくないよ。
国立大の御用達試験になるのはいいけれど、それと同時に、一般受験者のインセンティブもおこしてほしいと思っているよ。
では、受験者数を維持するにはどうすればいいだろうか。
一つ考えたのが、成績優秀者には受験料の一部を還元するというものだよ。
例えば、受験者上位10%以内の成績で合格した人には3,000円ほど還元されるという仕組みを作ったらどうだろう。
一見英検側にとっては損かもしれないけれど、全体で150円値上げするだけでもとが取れる。
英検1級、8400円でも受験者からすると(とくに学生受験者)充分高いだろうけど、9500円は本当高い。
このままでは受験者数確実に減るだろうし、上位合格者が3000円還元されるくらいのサービスが実施されなきゃ受ける気にならない。
— ヤマダカワウソ🍒ヒモかもしれないASD (@english_otter) 2018年11月20日
そうすれば、受験者はお金を安くしたいから今まで以上に熱心に勉強するだろう。となると、日本の英語力向上にもつながる。英語教育の機関として、これはかなり素晴らしいことなんじゃないかな。
さらには、英語自慢の人が何度も受けるようになって、結果的に収益が増えるかもしれない。
英検さんにはぜひ検討してほしいよ。
今回はここまでだよ。受験料が高くなった今、なるべく早く合格することがより一層求められるようになったと思うよ(^●ω●^)
追記:2020年度英検受験料改定に関して
2020年1月、2020年度英検の受験料が再度改定されることが発表されました。
これによると、英検CBT, S-CBT, S-Interview という従来の英検とは異なり毎週受験可能な試験に関しては値下げをする一方、従来の年3回の英検は値上げをすることになります。
民間試験導入延期に伴っての対応なのでしょうが、これもまた問題があるように思います。
その一つに、英検1級受験者のCBT等が実施されていない点があげられます。(2020年1月現時点で、『早期実現へ向けて進行中』なのだそう)
もともと中高生向けに作られたシステムである以上仕方ないことではありますが、これではしばらく1級受験者数が激減するのではないかと思っています。
これを解消するためにも、成績上位合格者の還付金制度をもうけることを再度提唱いたします。
合格者の中で上位30%程度の成績の人には数千円の還元をする。そうでもしないと、英語力上位層が英検を受験しなくなり、したがって英検の権威の低下にもつながるおそれがあります。
英検の試験内容は素晴らしいものがあり、私自身高く評価しています。
その英検の影響力がなくならないよう、英検法人には柔軟な対応を求めるところです。
追記:2021年度英検受験料改定について
2021年2月、2021年度の英検受験料が再度改定されることになりました。
2021年度「英検」「英検S-CBT」「英検S-Interview」検定料改定のお知らせ
これによると、従来式の受験形式では、例えば2級の受験料は9,700円。準1級の受験料は10,700円、1級の受験料は12,700円になるとのことです。
上に書いてあるように、2018年度まで、1級の受験料は8400円でした。この3年で51%の値上げです。準1級は55%、2級に至っては67%の値上げです。
英検の説明を読むと、検定料改定の理由にコロナによるコストが関係しているとあります。英検側の言い分としては、「コストの低減化・適正化につとめた結果の改定だからご了承ください」とあります。
しかし、3年で50%以上値上げする資格がどこにあるのでしょうか。
また、2020年度1月に「早期実現に向けて進行中」とあった、英検1級のCBT受験はどうなったのでしょうか。コロナで厳しい状況ですから、簡単にできるはずだとは言いません。しかし、それについての説明はないようです。
忘却に葬られようが、この記事では受験料改定のたびに記録していきますので、言い逃れはできません。
英検1級の速やかなるCBT受験、そして、コロナ収束後の検定料値下げを強く希望し、今回の記事をおわりとさせていただきます。
2021年、ついに英検値下げの署名活動が始まる
この、急激な値上げにともない、高校生が立ち上がった。N高の3年生の方が、検定料見直しを求める署名を始めた。
英検の受験料の値上げが毎年続き、3年間で約1.5倍〜2倍に跳ね上がっています。
英検の検定料見直しを求める署名ページを先ほど公開しました。
キャンペーン内容に賛同していただけましたら署名とシェアのご協力をよろしくお願いします。#英検の値上げに抗議します
https://t.co/xUnXWGuR6S— Hanae@英検値下げの署名活動中 (@hanae_vl) August 27, 2021
これは、起こって当然の運動だ。
コロナ禍で人々の収入が不安定になる中、英検は値上げを敢行した。いや、そう書くとかっこよく見えるから訂正しよう。値上げしやがった。
国立大の入試での民間試験活用は延期となったが、私立大学の入試なんかでは活用されている。
私立を受験しない人も、例えば高校受験において加点となるから英検を受けようとする人もいる。
上の活動では、以下のように「学生の苦悩」を示している。
コロナ禍で経済的な打撃を受けた家庭、アルバイトのシフトを減らされた学生、自分で受験料を払う学生が多い状況での値上げは、英検を受験する機会が経済状況に左右され教育格差を生む要因になっています。
受験料引き上げの発表があったとき、学生だけでなく、保護者、教員、社会人受験生から値下げを求める声がSNS上ですぐに上がりました。
決定権を持つ大人に、可能性ある若者が振り回されています。以前こそ「受験できるだけで贅沢」といった考えも少なくなかったようですが、今の時代に「自分の身の丈に合わせて頑張ってもらえれば」なんて発言があってはいけません。
皆様からの賛同は日本英語検定協会にお届けし、英検の受験料の見直しを検討してもらうよう働きかけを行っていく予定です。
上で僕は、「コロナ禍が収まり次第値下げを」と書いた。しかし、考えが甘かった。
受験生にとっては、今年が勝負だ。コロナがどうとか言ってられないんだ。
彼ら、彼女らの思いを考えると、どうして、値上げなどできるんだろうか。
ここは、政府の支援があってもいい、何とかして、英検の受験料を、せめて2018年度以前と同じ水準に戻してほしいよ。
僕からも、この活動の署名をお願いするよ。
コチラもオススメ!